あと施工アンカーは何 kg まで吊れるか:同じ M10 で、ETA 上の許容引張は 4.1〜9.5 kN

中国語の Q&A まとめサイトで「天井に打った拡張アンカーの引張力は」と聞くと、同じページに 20 kg、60 kg、200〜500 kg、320 kg、M12 なら 1,500〜1,800 kg という答えが並び、どれにも条件が付いていません。欧州ではアンカーを販売するのに欧州技術評価(ETA)が必要で、そこには何がどの条件でどれだけ持つかが書かれています。公開されている一つを見ると、同じ M10 が同じコンクリートで許容引張 4.1〜9.5 kN、約 418〜969 kgf。違いは埋込み深さと、そのコンクリートにひび割れがあるかどうかです。読了まで約 8 分。

コンクリートスラブの断面。下から打ったアンカーの先端から下面に向かって広がるコーン状の破壊範囲を赤線で示す

ネットの答えは 20 kg から 1,800 kg

中国語の Q&A をまとめたあるページは、天井のアンカーについての一つの質問に、次のような答えを集めています。

一つのまとめページに並ぶ答え(betermondo、翻訳)
答え付いている条件
一本で 60 kgなし
C20 コンクリートで約 200 N、つまり 20 kgコンクリート等級のみ、寸法なし
M10〜M12 で極限の鉛直引張 200〜500 kgなし
M6/8/10/12 で最悪の場合の最大静荷重 120/170/320/510 kg、れんがはその五分の一「コンクリートに正しく施工」
M12 で約 1,500〜1,800 kgなし

最大と最小の差は 90 倍です。どれかが間違いだとは限りません。どれも、答えを決める条件を省いています。 どのアンカーか、何 mm 埋めたか、どんなコンクリートか、ひび割れはあるか、縁からどれだけ離れているか、近くに別のアンカーがあるか。 それがなければ数字は比べられません。

読める評価書

EU で販売するアンカーには、指定機関が欧州評価文書(EAD)に従って試験したうえで発行する欧州技術評価が必要で、その多くは公開されています。 ここでは DIBt が fischer FAZ II に発行した ETA-05/0069(2020 年 4 月版、 EAD 330232-00-0601 コンクリート用の機械式アンカー)を使います。公開されていて一欄ずつ読めるから選んだだけで、 当サイトはこのブランドを代表しておらず、数字はこの製品だけのものです。

表 C1.1 は特性値、つまり試験結果の統計から出した下限値で、安全係数はまだ掛かっていません。M10 の欄は次のとおりです。

ETA-05/0069 表 C1.1、M10、引張、静的・準静的
項目値
鋼材破壊の特性耐力(亜鉛めっき品)28.3 kN
有効埋込み深さ hef40〜60 mm
引抜き、ひび割れコンクリート C20/2513 kN
引抜き、ひび割れのないコンクリート C20/2520 kN
特性間隔 scr,N/特性縁あき ccr,N3·hef/1.5·hef

鋼材は 28.3 kN 持ちますが、引抜きは 13〜20 kN です。先に壊れるのはたいていボルトではなく、ボルトがつかんでいるコンクリートの方です。 ねじの断面積に鋼材強度を掛けて出るのは一行目の数字で、決めているのはその下の行です。

特性値から、実際に吊れる量へ

fischer は同じ ETA を一本のアンカーが実際に負担してよい量に換算した許容荷重表を出しています。注には、EN 1992-4:2018 に従い、 ETA の材料側部分係数と荷重側部分係数 γL = 1.4 を考慮したとあります。M10 亜鉛めっき品、C20/25 の四つの欄です。

FAZ II 10 許容引張、C20/25、単体アンカー(fischer 荷重表)
埋込み hef最小部材厚ひび割れありひび割れなし
40 mm90 mm4.1 kN(約 418 kgf)5.9 kN(約 602 kgf)
60 mm110 mm6.2 kN(約 632 kgf)9.5 kN(約 969 kgf)

四つとも ETA から計算し直せます。60 mm、ひび割れあり:13 ÷ 1.5 ÷ 1.4 = 6.19 で表の 6.2、ひび割れなし:20 ÷ 2.1 = 9.52 で 9.5。 40 mm ではコンクリートのコーン破壊が支配し、k·√fck·hef1.5 に ETA の係数 7.7 と 11.0 を入れると 8.71 と 12.44 kN、 2.1 で割って 4.15 と 5.92 です。ETA の表が 1.5 を明記しているのは鋼材だけで、コンクリート側の 1.5 はこの四つの欄から当サイトが逆算したもので、四つとも一致します。 コーンの式は EN 1992-4 によるもので、当サイトは原文を読んでおらず、表の数字で検算しています。

言い換えると、許容値はおおむね特性値に 1 ÷ (1.5 × 1.4) = 0.48 を掛けたものです。どの値に掛けるかが大事で、 28.3 kN の鋼材強度に掛けると 13.5 kN になり、表のどの欄より大きくなります。

四つの欄の前提

単体のアンカー。表の注では、間隔 3·hef 以上、縁あき 1.5·hef 以上を単体としています。 埋込み 60 mm なら、互いに 180 mm 以上、縁から 90 mm 以上です。それより近いとコンクリートのコーンが重なったり縁で切れたりします。 表には縮小した最小間隔と最小縁あき(M10 で 40 と 45 mm)もありますが、その場合は EN 1992-4 で計算し直す必要があります。

コンクリート、それも C20/25 以上。ETA の対象はコンクリートです。等級が上がれば引抜きも上がり、C30/37 の割増し係数は 1.22 です。 れんがはこの文書の対象外で、「れんがは五分の一」という換算の出典は見つかりませんでした。

ひび割れの有無は設計者が判断する。同じ埋込みで、ひび割れなしはありより 44〜53 % 高い値です。ETA は両方の欄を示し、どちらを使うかは決めません。

文書どおりの施工。ETA は穿孔を面に対して ±5° 以内の垂直とし、孔の清掃を求めています。fischer の表では M10 の締付けトルクは 45 N·m です。 埋込み深さはボルトの長さではなく有効な埋込み深さです。

この製品だけ。ETA のないアンカーには、この表の数字は一つも当てはまりません。その製品自体の評価書か試験報告書が必要です。

ネットの答えに戻ると

「M10 で最悪 320 kg」は約 3.1 kN で、40 mm・ひび割れありの許容値 4.1 kN より低く、控えめな数字としては外れていませんが、製品も条件も書いていません。 「M12 で 1,500〜1,800 kg」は 15〜18 kN で、同じ ETA の M12 ひび割れなしの引抜き 22 kN を 2.1 で割った 10.5 kN を超えています。 これを使用荷重として扱えば、安全余裕の大半を使ってしまいます。

この文書から持ち帰れるのは問い方です。「何 kg 吊れるか」は、アンカーの型式、埋込み深さ、コンクリート等級、ひび割れの有無、縁あきと間隔が揃って初めて答えが出ます。

このページから言えないこと

このページは引張だけを扱い、せん断、組合せ荷重、地震は扱っていません。数字はすべて fischer FAZ II、C20/25 コンクリート、単体アンカーのものです。 EN 1992-4 は読んでおらず、コーンの式とコンクリート側の 1.5 は fischer の表との一致で確かめただけです。日本の告示や指針は確認していません。 樹脂プラグは別の製品です。人の安全がかかる固定は、実際の条件で構造の専門家に設計してもらってください。

この記事は手順 1、相手材を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

M10 のあと施工アンカーは何 kg 吊れる?

製品、埋込み深さ、コンクリートのひび割れの有無で決まります。公開されている ETA-05/0069(fischer FAZ II)では、C20/25 コンクリートで単体の M10 の許容引張は、埋込み 40 mm・ひび割れありで 4.1 kN(約 418 kgf)、なしで 5.9 kN、60 mm でそれぞれ 6.2 kN と 9.5 kN(約 969 kgf)です。この製品だけの値です。

先に壊れるのはボルトか、コンクリートか?

その ETA では M10 の鋼材耐力が 28.3 kN なのに対し、引抜きは 13〜20 kN、浅い埋込みのコーン破壊はさらに低くなります。たいていコンクリート側が支配するので、ねじの断面積と鋼材強度から見積もると過大になります。

縁からどれだけ離せばよい?

その ETA の特性縁あきは有効埋込み深さの 1.5 倍、特性間隔は 3 倍です。60 mm 埋込みなら縁から 90 mm、互いに 180 mm 以上で単体の値が使えます。近づけることもできますが、EN 1992-4 で計算し直す必要があります。

参考資料

ETA-05/0069 の附属書の表は PDF 上で画像のため、画像に変換して一欄ずつ読みました。ETA は部分的な複製に DIBt の同意が必要としているため、このページは個々の値を出典付きで引用するにとどめ、表は複製していません。換算、コーンの検算、kgf 換算(1 kN = 101.97 kgf)は当サイトの 2026-10-02 の計算です。EN 1992-4 は未読です。ネットの答えは二次情報で、翻訳しています。

お問い合わせ

アンカーや組み合わせるボルトが必要な場合は、母材とコンクリート等級、荷重、埋込みの制約、縁あきと間隔、評価書の要否を引合いに書いてください。

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