せっこうボード壁に手すりブラケットを付ける:40 mm のねじはボード 2 枚を抜けて柱に約 10 mm、102.5 kgf。70 mm で 270 kgf

壁裏センサーで下地が見つかったら、次はねじの長さです。布田健氏らが 2003 年に日本建築学会技術報告集に発表した手すり取付け強度の実験に、この問いと照らし合わせられる比較があります。せっこうボード 12.5 mm の 2 枚張りに柱という壁で、40 mm のねじではブラケットの最大荷重が 102.5 kgf。著者は、ねじが柱に 10 mm 程度しか掛かっていないためと説明しています。同じ壁で 70 mm のねじにすると 270 kgf で、81 体の試験体のなかで最大でした。試験したのは手すりブラケットで、棚受ではありません。読了まで約 7 分。

二つの壁断面が並び、金属の手すりブラケットがねじでせっこうボード 2 枚を貫いて木の柱に留められている。左の短いねじは先端だけが柱に入り先端が赤く、右の長いねじは柱の奥まで入っている。

知恵袋の質問:長さは 3 センチでよいか

2017 年 11 月、Yahoo!知恵袋に次のような質問がありました。壁うらセンサーで間柱の位置を見つけ、どこ太で測るとボードの厚さは 2 センチくらい。 ロールスクリーンのブラケットと、棚受・棚柱を付けたい。木ねじでよいか、皿かなべか、ステンレスにすべきか。 そして「長さは3センチでいいでしょうか」、長いと太くなってしまうのでは、という内容です。

ベストアンサーは、ボードは 15 mm か 2 枚張りかもしれないので厚さを確認すること、長さは固定物の厚さとボード厚の 3 倍程度が理想と答え、 棚受と下地のあいだのせっこうボードは強固ではないと注意しています。 ほかに、最近は胴縁を付けるのでボード面から間柱までが遠く、50 mm 以上を使っているという回答、 ブラケット厚+ボード厚+間柱に効かせる長さで 45〜50 mm と見積もる回答もありました。

どの回答も「もっと長く」という方向ですが、経験値で、短いとどれだけ弱いかは示されていません。 次の実験は、同じ壁でねじを 40 mm と 70 mm の 2 種類にして比べています。

実験の条件

布田健氏(当時、建築研究所)ら 7 名は、住宅で一般的な壁構法に手すりブラケットを取り付け、鉛直に加力して取付け強度を調べました。 壁仕様は 27 種類、各 3 体の計 81 体です。壁面材はせっこうボード 9.5 mm・12.5 mm、硬質せっこうボード、合板、 壁下地材は柱、幅 35 mm と 27 mm の間柱、軽量鉄骨、および下地なしです。

実験 1 の条件(布田ら、2003、2-1・2-2 節、表 1・表 2)
項目条件
試験体600 × 600 mm の壁、27 仕様 × 3 体=81 体
ねじタッピンねじ(皿)径 3.5 mm・長さ 40 mm、2 本止めと 3 本止め
下地の木材柱 105 × 88 mm(ホワイトウッド、比重 0.40)、間柱幅 35 mm(SPF、0.54)、間柱幅 27 mm(ホワイトウッド、0.45)
加力鉛直荷重のみ。60 kgf(590 N)まで加力して除荷し、再加力して破壊まで。最大荷重で評価
ばらつき平均値に対する標準偏差は 13% 程度

荷重-変位曲線の例(図 5)では、60 kgf 付近で勾配が緩やかになり、著者はこれを壁面材の圧壊の始まりとみています。 最大荷重の時点でねじが抜け始めます。論文によれば、後述の 70 mm の条件を除き、ほかの試験体の破壊要因はねじの引抜きでした。

40 mm と 70 mm:同じ壁で 2.6 倍

2-3 節 (5)「ねじの長さによる比較」では、せっこうボード 12.5 mm の 2 枚張りに柱という壁で、ねじを 40 mm と 70 mm の 2 種類にしています。

ねじの長さ別の最大荷重(布田ら、2003、2-3 節 (5)、図 10)
ねじ長さ最大荷重破壊の要因柱へのねじ込み長さ(当サイト推算)
40 mm102.5 kgf(1,004.5 N)ねじの引抜け約 10 mm(論文も 10 mm 程度と記載)
70 mm270 kgf(2,648 N)、全試験体で最大ブラケットの破断(この条件のみ)約 40 mm

論文は、40 mm で十分な強度が得られなかった理由を、柱にねじが 10 mm 程度しか掛かっていないためとしています。 70 mm は他の試験体と違ってブラケットの破断で決まり、ねじの長さによる強度への影響は特に高いと考えられる、と書いています。 40 mm の荷重は 70 mm の 38% です。

表の右端は当サイトの計算です。ねじ長さからブラケット座板の厚さ(図 2 に 5 mm と記載)とボード 2 枚分の 25 mm を引くと、 40 − 5 − 25 = 10 で、論文の「10 mm 程度」と一致します。同じ計算で 70 mm なら柱に約 40 mm 残ります。 70 mm のねじの径は論文に記載がありません。

二つの壁断面が並ぶ。金属ブラケットがねじでせっこうボードを貫いて木の柱に留められ、左の短いねじは先端だけ、右の長いねじは長い区間が柱に入り、木材に入った部分が赤い。ブラケットの上に下向きの矢印がある。
同じ壁(せっこうボード+柱)で、短いねじは先端だけが柱に入り、長いねじは大部分が柱に残る。赤い部分が木材へのねじ込み長さ。模式図・縮尺不同。

全試験体を強度順に並べた図 11 からは、ボード厚の影響も読み取れます。上 3 行は当サイトが図から読んだ平均値で、本文に数値があるのは 102.5 と 270 だけです。

40 mm・3 本止め・柱のときのボード構成と最大荷重(布田ら、2003、図 11。「約」は読み取り値)
せっこうボード柱へのねじ込み長さ(推算)最大荷重の平均
9.5 mm 1 枚約 25 mm約 170 kgf
12.5 mm 1 枚約 22 mm約 133 kgf
12.5 mm 2 枚約 10 mm102.5 kgf
12.5 mm 2 枚、ねじ 70 mm約 40 mm270 kgf

ボードが厚いほど荷重は下がっています。ただしボード厚を変えると、ねじ込み長さと、ブラケットと柱のあいだで圧壊する層の厚さが同時に変わります。 論文が原因を述べているのは 40 mm と 70 mm の比較だけなので、上 2 行の差をすべてねじ込み長さで説明することはできません。

本数と樹種:2 本止めは 3 本止めの約半分

同じ論文は、壁面材をせっこうボード 9.5 mm にそろえて下地材も比べています。

壁下地材別の最大荷重の平均(布田ら、2003、2-3 節 (3)、図 8。数値は読み取り値)
下地と本数最大荷重の平均
間柱幅 35 mm、3 本止め約 205 kgf
柱、3 本止め約 170 kgf
間柱幅 35 mm、2 本止め約 110 kgf
間柱幅 27 mm、2 本止め約 85 kgf
軽鉄(板厚 0.8 mm)、3 本止め約 75 kgf

論文の記述は 3 点です。2 本止めは 3 本止めの約 50%。軽鉄は板厚 0.8 mm でねじのかかりが少なく、最も低い。 間柱が柱より強いのは樹種の違いで、ねじ 1 本の引抜き力試験(表 3)では間柱 35 mm が平均 306.18 kgf、柱が平均 247.35 kgf でした。 柱の標準偏差は 105.24 kgf、間柱は 16.76 kgf で、同じねじでも材によってこれだけばらつきます。

著者は、現場では下地の位置が正確にわからないことが多く、間柱にねじ 3 本を止めるのは困難なので、 2 本止めの強度を実際の強度ととらえたほうが安全だとしています。幅 27 mm の間柱では実験でも 2 本しか効きませんでした。

基準との照合と、その限界

論文は(財)ベターリビングの優良住宅部品認定基準を参照しています。歩行補助手すりは中央部に 1,150 N(120 kgf)、 動作補助手すりは端部と中央部に 590 N(60 kgf)をかけ、レールや取付け金物にガタツキ、外れ、破壊を生じないこと、という内容です。 著者はこれを参考に「仮に」グループ分けしており、120 kgf 以上の A グループの代表は柱や間柱へのねじ 3 本止めでした。 40 mm でボード 2 枚を抜けた 102.5 kgf は B グループに入ります。

この照合には限界があります。基準は手すり 1 本の試験で、実験 1 はブラケット単体です。 実験 3(試験体 9 体・各 n=1、ブラケット間隔 910 mm)でレールを付けると、ブラケット 1 つ分にかかる荷重は単体試験のおよそ 80〜91%(集成材で 80%、樹脂被覆鋼管で約 83%、ステンレス鋼管で約 91%)でした。 著者は、具体的にはレールの剛性やブラケットの設置間隔を考慮する必要があるとしています。 また、最大荷重は 60 kgf で一度除荷したあと破壊まで加力して得た値で、繰返し荷重試験は行っておらず、長期使用によるガタツキは今後の課題とされています。

幅 27 mm の間柱には補強策も試されています。コーチスクリュー 6 × 50 mm 1 本で座金を間柱に留め、その座金にブラケットを付けると、 座金 φ50 で実験 1 のタッピンねじ 2 本止めの約 1.6 倍、φ80 で約 2 倍でした。コーチスクリューを間柱のような幅の狭い材に取り付ける場合は、あらかじめ下穴を明けて万一の割れを防ぐ必要があると書かれています。

下地が見つかったら、ねじの長さはこう決める

論文にねじ長さの算定式はなく、データは 40 mm と 70 mm の 2 点です。以下は論文の幾何関係と結果を、現場の判断につなげた手順です。

  1. 木材までの厚さを測る。 当サイトとしては、取り付ける位置で 1 か所だけでなく複数か所を確認することをおすすめします(論文は測定方法に触れていません)。ボードの 2 枚張りや、間柱の外側の胴縁も「木材までの厚さ」に含めます。
  2. 引き算でねじ込み長さを出す。 ねじ長さ − 取付け物の座板厚さ − 木材までの厚さ = 木材に残る長さ。 質問者の条件(ねじ 30 mm、ボード約 20 mm)では、ブラケット厚を引くと 10 mm 未満で、論文の 102.5 kgf の条件より短くなります。
  3. 70 mm の条件を比較点として見る。 論文でただ一つ引抜けずにブラケットが破断した条件は、当サイトの推算で柱に約 40 mm 残る長さでした。 1 つの壁仕様・2 点のうちの 1 点で、70 mm のねじの径も不明なので推奨値ではありません。40 mm が下限という意味でも、30 mm では不可という意味でもありませんが、約 10 mm の条件では荷重は 38% でした。
  4. 下地に効いている本数を数える。 穴が 3 つあっても、3 本とも間柱に入っているとは限りません。施工後に各ねじが木材に入ったかを判定する方法は論文にありません。 論文の提言どおり、2 本止めの強度で見積もります。
  5. 幅の狭い間柱には下穴を明ける。 論文の注意は、幅 27 mm の間柱に φ6 × 50 mm のコーチスクリューを取り付ける場合のもので、下穴を明けて万一の割れを防ぐよう求めています。 ほかのねじで下穴が要るか、径をどうするかはねじと樹種によります。下穴径の考え方は下穴の規則は樹種を名指しし、谷径から測るをご覧ください。
  6. 下地が軽鉄なら、この計算は使えない。 板厚 0.8 mm の軽鉄は実験で最も低い下地で、論文はねじのかかりが少ないためとしています。木材へのねじ込み長さの計算をここに使う根拠はない、というのが当サイトの判断です。

せっこうボードそのものを木下地に留めるねじについては、米国のモデルコード IRC が木材へ 5/8 in(約 16 mm)以上の貫入を求めています (規範が許すねじの本数は、釘より少ない)。 これはボードを壁に留めるための規定で、ブラケットの耐力については何も定めていません。荷重を受けるブラケットでは、柱に約 10 mm のとき 102.5 kgf でした。両者を流用し合うことはできません。

下地が見つからず、ボードだけに留める場合は別の問題です。家具転倒防止金具で試験した例を 家具転倒防止の L 型金具をせっこうボードに直接留める:アンカーを 1 本から 3 本にしても最大引抜き耐力は 1.08〜1.15 倍にまとめています。

このページから言えないこと

ねじ長さの比較は 1 つの壁仕様(せっこうボード 12.5 mm 2 枚張り+柱)、2 種類の長さ、各 3 体だけです。 したがって「何 mm 効かせれば十分」や最適な長さは言えません。70 mm のねじの径は記載がないので、「径を変えずに長くすれば」とも言えません。 柱へのねじ込み長さは座板 5 mm を仮定した当サイトの推算、図 8 と図 11 の値は読み取り値です。 荷重は鉛直方向に 60 kgf で一度除荷したあと破壊まで加力した最大値で、繰返し荷重は含みません。ブラケット単体の値なので、棚に何 kg 載せられるかには換算できません。 実験 3 の 80〜91% はブラケット間隔 910 mm・各 n=1 の組み合わせによる値で、ほかのレールや間隔にそのまま当てはめることはできません。 木材は試験に使われたホワイトウッドと SPF で、ほかの樹種では引抜き力が変わります。知恵袋の回答は個人の経験です。

この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。

よくある質問

下地の柱があるとき、ねじは何 mm 必要ですか?

「ねじ長さ − 座板厚 − ボード厚」で木材に残る長さを出します。布田ら(2003)では、せっこうボード 12.5 mm 2 枚張り+柱で、40 mm のねじは柱に約 10 mm しか掛からず最大 102.5 kgf、70 mm では 270 kgf でねじは抜けずブラケットが破断しました。最適な長さは論文に示されていません。

ブラケットの穴が 3 つあれば、3 本とも間柱に効きますか?

限りません。著者は、現場では下地の位置が正確にわからないことが多く、2 本止めの強度を実際の強度とみるほうが安全だとしています。2 本止めは 3 本止めの約 50% でした。幅 27 mm の間柱では 2 本しか効きませんでした。

ボードを留めるねじは木材に 16 mm 以上とされますが、棚受も同じでよいですか?

そのまま当てはめることはできません。IRC の 5/8 in(約 16 mm)はボード自体を木下地に留める規定です。荷重を受けるブラケットでは、柱に約 10 mm のとき 102.5 kgf、約 40 mm(当サイト推算)のとき 270 kgf でした。

下地が軽量鉄骨の場合は?

論文では板厚 0.8 mm の軽鉄が最も低い下地で、3 本止めで約 75 kgf(図からの読み取り値)でした。薄い鋼板ではねじのかかりが少ないためで、木材へのねじ込み長さの考え方は使えません。

参考資料

論文 PDF は古いスキャンのため、数値はすべてスキャン画像で確認しました。102.5 kgf、270 kgf、10 mm 程度、50%、13%、表 3 の引抜き力、認定基準、実験 2・3 の倍率は原文どおりです。図 8・図 11 の値は当サイトの読み取りで「約」を付けています。柱へのねじ込み長さは図 2 の座板 5 mm から求めた当サイトの計算です。

お問い合わせ

柱に効かせる長ねじやコーチスクリューが必要な場合は、ボードの総厚さ、取付け物の座板厚さ、下地の材種をお知らせください。必要な長さに合わせてご提案します。

お見積り依頼

品名と数量をお知らせください。可否、納期、価格をご返信します。

送信するとメールソフトが開き、内容が入力済みになります。

直接メールでも承ります sales@tigerfasteners.com